「挑戦者を一人にしない。」横須賀市が掲げる伴走型スタートアップ支援
横須賀市経済部創業・新産業支援課 小島英雄・長谷川智美
「変化を力に進むまち。横須賀市。」
これは「YOKOSUKAビジョン2030」で掲げられている、2030年に向けた横須賀市の未来像です。人口減少や高齢化といった社会構造の変化を“課題”として受け止めるのではなく、新たな可能性として捉え、積極的に挑戦していく姿勢を示しています。
そのビジョンを具体的な制度として形にしているのが、「スタートアップオーディションin YOKOSUKA」(以下、スタートアップオーディションといいます。)を軸とした伴走型支援です。これまでの取り組み、これからの挑戦について横須賀市経済部創業・新産業支援課で創業支援を担当する小島さん、長谷川さんにお話を伺いました。
地理的不利を強みや原動力に変える
Q:横須賀市がスタートアップ支援に力を入れる背景について教えていただけますか?
長谷川さん
横須賀は三浦半島の先端に位置していますので、地理的に“行き止まり感”があると言われることがあります。実際に人口減少も進んでいますし、都市としての成長可能性について厳しい声があるのも事実です。
ただ、私たちはその状況を嘆いていても何も変わらないと考えています。変化を受け身で受け止めるのではなく、そこから何を生み出せるかを考えることが重要だと思っています。
「YOKOSUKAビジョン2030」では「変化を力に進むまち」と掲げていますが、それは決してきれいごとではありません。人口構造の変化や社会課題の顕在化を、新しい挑戦の機会として捉え直すという意思表示です。
また、「失敗を恐れない挑戦者を応援するまち」というスローガンも掲げています。挑戦してうまくいかなかったとしても、それで関係を終わらせない。挑戦そのものを評価し、次につなげていく。その姿勢が“挑戦者を一人にしない”という言葉につながっているのだと思います。
“官民連携”ではなく民間主導へ
Q:横須賀の支援の特徴について、どのように感じていますか?
長谷川さん
横須賀では「横須賀市民官連携推進」を行っており、官民ではなく“民を前に出す”という感覚があると思っています。行政が主役になるのではなく、民間の挑戦が前に出て、その後ろから行政が支えるという構図です。
そのため、民間の方からいただいた提案や相談については、できるだけ生かしたい、どこかにつなげたいという意識があります。単に受け取るだけでなく、どうすれば前に進められるかを考える文化は、庁内にもあると感じています。
小島さん
課題の提示方法もその考え方に基づいています。各課が個別に課題を出すのではなく、横須賀市民官連携推進WEBサイト「OPEN GATE YOKOSUKA」(以下、オープンゲートといいます。)として横断的にまとめて公開しています。
部署ごとにバラバラに出すのではなく、市として一つの窓口に整理して提示することで、外部から見たときの分かりやすさを意識しています。自治体サイトとして横断的に公開している例は、まだ多くはないのではないかと思います。
オーディションが変えた「推せる仕組み」
Q:「オープンゲート」と「スタートアップオーディション」の違いは何でしょうか?
長谷川さん
「オープンゲート」は基本的に広く“つなぐ”役割です。市と事業者、あるいは事業者同士をフラットにおつなぎする仕組みです。地域の課題の解決や、市民サービスの向上につながる提案や事例がこれまで多く生まれています。一方で、つなぐことを重視しているため、良い提案であっても行政として踏み込めない場面があります。
その点、「スタートアップオーディション」は明確です。入賞者には3年間の伴走支援があります。「横須賀市が伴走しています」と公式に言える。その旗を立てられることが非常に大きいと感じています。制度として“推せる”仕組みができたことは大きな変化です。
小島さん
内外との調整も動きやすくなりました。「横須賀市が応援している事業です」と説明できることで、関係部署や地域の団体や企業との調整が進みやすくなっています。個別案件ではなく、市として後押ししている取り組みであるという点が、実務上とても大きいと感じています。
「表彰して終わり」ではない3年間
Q:「スタートアップオーディション」の特徴について教えてください。
(左から:株式会社Swell 青波 美智さん、株式会社タウンニュース社安池 裕之さん、株式会社e-PON 鷲沼 輝勝さん、株式会社Macmillan 横地 広海知さん、株式会社ヘミセルロース 西脇 毅さん、ehn 渡辺 翼さん、株式会社デザイニウム 秦 優さん)
長谷川さん
「スタートアップオーディション」は、単なるアイデアコンテストではありません。重視しているのは、実際に事業を立ち上げ、横須賀で実装することです。入賞して終わりではなく、3年間伴走します。事業フェーズや課題は企業ごとに異なります。行政内部との調整が必要なケースもあれば、関係団体とのマッチングが重要になる場合もあります。実証実験の場づくりが求められることもあります。
一律のメニューを当てはめるのではなく、その事業に合わせて支援内容を組み立てています。入賞事業者とは密なコミュニケーションを取りながら、継続的に伴走支援を行っています。必要に応じて随時やり取りを重ね、事業の進捗に合わせた支援を実施しています。
京急電鉄との連携で“広がる挑戦”
Q:民間との連携体制について教えてください。
長谷川さん
「スタートアップオーディション」応募時に、京急電鉄の「アクセラレータープログラム」にもチェック一つで同時応募できる仕組みにしています。
入賞者には横須賀市・京急電鉄が力を合わせて支援する体制を整えています。単発の取り組みではなく、継続して関わることを前提にした体制です。
多数の応募、その先へ
Q:オーディションの応募状況はいかがですか?
小島さん
2026年度は47件で過去最多の応募がありました。市外や県外からの応募もあります。
横須賀は自然環境があり、首都圏にも近い立地です。また、高齢化率が高く、社会課題が先に顕在化している地域でもあります。
実証フィールドとして、リアルな社会課題に向き合える環境があることを評価していただいているのかもしれません。
「少しでも引っかかったら、チャレンジしてほしい」
Q:最後に、挑戦を考えている方へメッセージをお願いします!
長谷川さん
完璧な事業計画である必要はありません。最初からすべてが整理されていなくても構いません。少しでも「やってみたい」「この地域で試してみたい」と心に引っかかるものがあれば、ぜひチャレンジしていただきたいです。
小島さん
横須賀には外的な特徴として、海や山といった自然環境があります。また、高齢化率が比較的高いという側面もあります。これは一概に良い悪いではありませんが、社会課題が先に顕在化している地域であるということでもあります。
もちろん、もっと地方に行けば同様の環境はあると思いますが、首都圏に比較的近い場所でそうした課題が見えているという点は、横須賀ならではの特徴だと考えています。だからこそ、「この地域で実証実験をしてみたい」「一緒にやってみませんか」というご相談があれば、ぜひお声がけいただきたいです。
そして、私たちとしても、実証実験で終わらせずその先の実装や事業化まで見据えて、どうつなげていけるかを一緒に考えていきたいと思っています。
横須賀は、挑戦者を一人にしません。
「スタートアップオーディションin YOKOSUKA」 じは横須賀市内で新たなビジネスの立ち上げと実装を目指す創業希望者や起業家を募集・支援するオーディションです。横須賀市・京急電鉄等との連携による伴走支援を行い、地域課題解決と経済活性化を地域全体でバックアップします。
「OPEN GATE YOKOSUKA」は、横須賀市が民間事業者との連携を加速・促進するために設置した専任部署およびウェブサイトです。企業、大学、NPOなどからの自由な提案を受け付け、地域の課題解決や街の活性化を民官連携で支援しています。