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現場DXは“ツール”ではなく“仕組み”で実装する。元現場監督がたどり着いた解決策

株式会社SHO-CASE 髙村 勇介

建設や内装、展示会といった施工現場では、DXの必要性が語られる一方、入退場管理や安全書類はいまだ紙やExcelに依存しています。特に短期・小規模の内装やイベントの現場では、限られた人員で管理を回す必要があり、業務が属人的になりやすいのが実情です。その結果、個人情報保護や労務安全の面で、リスクを抱えたまま運用されているケースも少なくありません。
こうした課題に向き合ってきたのが、建設業向けノーコードアプリ開発を展開する株式会社SHO-CASEです。同社は当初、汎用的なSaaSの開発に取り組んできました。しかし事業を進める中で、建設業界は想像以上に多様であり、業種や現場ごとに求められる管理項目や運用が大きく異なることが、徐々に明らかになっていきました。
現在同社が向き合っているのは、「一つの正解」を押し付けるDXではありません。現場ごとに異なる実情を前提としたうえで、無理なく実装できる仕組みをどうつくるか。その問いに向き合いながら、神奈川県のベンチャー支援プログラム「かながわ・スタートアップ・アクセラレーションプログラム(KSAP)オープンイノベーション促進事業「ビジネスアクセラレーターかながわ(BAK)といった神奈川県の支援制度も活用し、事業の方向性を磨いてきました。創業者の髙村さんに、サービス方針の変化と現在地、そして今後の成長戦略について話を聞きました。

現在のSHO-CASEのサービスについて教えてください

SHO-CASEは、創業当初、施工現場や内装現場、展示会などでの入退場管理や労務・安全管理をデジタル化するサービスを展開していました。スマートフォンでQRコードを読み取るだけで、「誰が」「いつ」「どこに」入退場したかを記録でき、紙やExcelによる煩雑な管理から現場を解放し、業界の課題解決を目指しました。
現在は、汎用的なSaaSとして一律に提供するのではなく、現場や企業ごとに必要な項目や機能をGoogleが提供するノーコードツール「AppSheet」で柔軟にカスタマイズする形で展開しています。現場ごとの慣習や運用フローに合わせられることが、導入後の定着や継続利用につながっています。

SHO-CASEでは、「施工管理アプリ」のほか、「安全書類管理アプリ」「見積もり作成アプリ」をリリース(株式会社SHO-CASE プレスリリース

創業の背景には、どのような原体験があったのでしょうか

私は内装空間や展示会などの空間づくりを手掛けるディスプレイ業界で約5年間、現場監督として働いていました。入退場管理や安全書類は、現場の事故を防ぐうえで欠かせない業務です。しかし実態は紙ベースで、現場が変わるたびに同じ情報を何度も書き直す運用が当たり前でした。

個人情報や緊急連絡先、保険の有無といった重要な情報を、属人的に管理し続ける。その非効率さとリスクを、当事者として日々感じていたことが、「この構造を変えたい」と思った起業の原点です。

事業を進める中で、サービスはどのように進化してきましたか

事業を進める中で、建設業界は一括りにできないことがはっきりしてきました。内装、マンションの大規模修繕、土木、イベントなど、建設業界の中にはまたそれぞれ業種の異なる文化が存在し、業界ごとに慣習も安全管理の考え方も異なります。
例えば、マンションの大規模修繕では「蜂に刺された経験の有無」を管理項目として求められることがあります。このような内容は内装工事の環境では管理しない項目で、こうした業界ごとの違いに汎用SaaSで対応し続けるのは難しい。そこで、現場ごとに最適化する方針へと舵を切りました。この判断が、現場へのフィット感と事業の持続性につながっています。
現在日本には約400以上もの建設テックサービスが存在します。これだけ選択肢があると、建設会社側にとってはどれが自社に最適なのかを選ぶのも容易ではありません。だからこそ重要なのは、導入されることではなく、「使われ続けるかどうか」だと考えています。
単に機能を増やすのではなく、現場の業務フローにどこまで自然に組み込めるか。解約率を重要な指標としながら、プロダクトの磨き込みを続けています。

KSAP・BAKをどう位置づけて活用してきましたか

KSAP」や「BAK」は、事業を一気に成長させるための制度というよりも、「次の判断に進むための検証の場」として活用してきました。構想段階から実証までを段階的に試せる設計になっており、起業家の成長プロセスに沿った支援だと感じています。

特に印象に残っているのは、神奈川県がベンチャー支援のかながわモデル「HATSU-SHINKANAGAWA」を起点に、KSAP、BAKへとステップを用意している点です。アイデア段階から事業化、実証へと進む流れが明確で、起業家として「次に何を考えるべきか」を整理しながら前に進むことができました。実際に私たちも、KSAPからBAKへと段階的に支援を受ける中で、事業の方向性を見極めていきました。

神奈川県の支援を受けてみて、どのような印象を持ちましたか

支援の距離感が非常に良かった点も印象に残っています。過度に干渉されることはなく、自分たちの意思決定や戦略を尊重した上で、必要なタイミングで壁打ちや選択肢を提示してもらえる。県の職員の方々の熱量も高く、「一緒に事業を前に進めよう」という姿勢が伝わってきました。

一方で、事業フェーズが進むにつれて、支援の役割も変わってくると感じています。組織として一定の規模になってくると、営業や売上以上に、採用や広報といったテーマが重要になってきます。そうしたフェーズでは、支援制度に頼るのではなく、自分たちで動く必要がある。その前提に立ったうえで、接点を持ち続けられる場としてKSAPやBAKがあること自体に、大きな価値があると捉えています。

制度はゴールではなく、あくまでプロセスの一部です。自分たちが今どのフェーズにいるのかを理解しながら活用することで、無理なく次のステージへ進むための土台をつくってくれる存在だったと感じています。

BAK成果発表会(2024年)

現在の成長戦略について教えてください

短期的には、カスタマイズ型の提供を通じて、現場での利用価値をさらに高めていくことを重視しています。機能を増やすこと自体が目的ではなく、現場の業務フローにどれだけ自然に組み込めるか、日常的に使われる存在になれるかを最優先にしています。
現場で「なくてはならない存在」になることができなければ、継続利用や事業としての安定にはつながりません。まずは一つひとつの現場で確実に価値を出し、使われ続ける状態をつくる。その積み重ねが、次の成長につながると考えています。
中長期では、建設業界に限らず、他業界への展開や海外展開も視野に入れています。施工現場で培ってきた入退場管理や労務・安全管理の仕組みは、業界が変わっても応用できる余地があると感じています。
10年後に売上30億円という目標を掲げていますが、その実現に向けて、特にアプリ事業のスケールには本気で向き合っています。単発の案件対応にとどまらず、仕組みとして広がっていく形をどうつくるか。今はその土台づくりに注力している段階です。

今後の展望を教えてください

入退場管理にとどまらず、職人のスキルや就労履歴、稼働実績といったデータも含めて蓄積し、「現場×人」を支える基盤をつくりたいと考えています。
起業家フェーズは終わり、これからは経営者として、事業と組織の両方をどう成長させていくか。その問いに腰を据えて向き合っていきます。

神奈川県発オープンイノベーション促進事業「BAK」
BAK

「BAK(バク)=ビジネスアクセラレーターかながわ」

「BAK(バク)=ビジネスアクセラレーターかながわ」は、ベンチャー企業と大企業等の連携によるオープンイノベーションを生み出すための取り組みです。

神奈川県発「社会課題解決型スタートアップ」の成長を支援するプログラム​
かながわ・スタートアップ・アクセラレーション・プログラム(KSAP)

かながわ・スタートアップ/アクセラレーション・プログラム(SKAP)」

「かながわ・スタートアップ/アクセラレーション・プログラム(SKAP)」は、社会課題の解決に取り組むスタートアップを伴走支援するプログラムです。
年間を通じて、起業初期を対象としたプログラム「KSAPシード編」と、さらなる事業成長を目指す企業を対象としたプログラム「KSAPアーリー編」の2つを実施します。

企業情報

株式会社SHO-CASE

株式会社SHO-CASE

【事業内容】

施工現場向けのIT開発・企画・運用
内装・展示会・イベント・ディスプレイ業 工事請負

【企業サイト】

https://sho-case.net/

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