事例・インタビュー

\ 活躍する起業家や支援の取り組みをご紹介 /

先端技術の社会実装を目指す。リニア開通を見据え、新戦略を携え挑戦する相模原

相模原市環境経済局経済部創業支援・企業誘致推進課 多良 幸人、滝田 嵩、佐久間 莉花 

リニア中央新幹線の開通を控え、相模原市は次のステージに向けた準備を着実に進めています。
スタートアップが実証を重ね、企業と大学がつながり、市民が技術に触れる。
それぞれの取り組みが重なり合いながら、相模原ならではのエコシステムが形づくられています。
相模原アクセラレーションプログラム(以下、SAP)、広域スタートアップ支援ネットワーク形成事業「Greater Linear Startup Network」(以下、GLiS)、イノベーション創出促進拠点を設置するJR東海・FUN+TECH LABO(ファンタステックラボ)の施策を起点に、相模原市の担当者である多良さん、滝田さん、佐久間さんに話を伺いました。

リニア開通を見越した相模原市のイノベーション戦略


現在進めているイノベーションを生むための各事業は、相模原市にとってどのような位置づけにありますか。


多良さんのアイコン
多良さん:

2025年11月に相模原市で策定された「リニア駅周辺まちづくりイノベーション戦略」において、リーディングプロジェクトに位置付けられています。この戦略では、将来のリニア開通を見据え、あるべき産業やまちの姿を具体的に定め、どのようにイノベーション創出の基盤を築いていくかを整理しています。

相模原市全体に蓄積されてきた多様な産業アセットやリソースと連携しながら、研究開発や事業開発、スタートアップ支援、ロボット産業政策などを軸に、新たな価値やイノベーションを生み出す拠点形成を推進していく内容です。

単なる構想にとどまらず、目標を明確にしたうえで、それをどう実現していくのかという実行の道筋まで落とし込んでいます。

その戦略を実現するためのリーディングプロジェクトとして、私たちが担当しているSAPやFUN+TECH LABO、GLiSなどが進行しているという構造です。

 

相模原の強み ― 製造、研究開発、そして“実証できるまち”

相模原市の強みはどこにあると感じていますか。

 

多良さんのアイコン
多良さん:

相模原は、内陸工業都市として発展してきた歴史があります。
製造業が集積しているだけでなく、R&D機能を持つ企業やJAXA相模原キャンパスをはじめとする研究機関も立地しています。
さらに、市街地と中山間地域を併せ持つため、実証フィールドが多様です。
人が多く行き交う駅前空間や、山や森の中で行うものなど、スタートアップのサービスや課題に応じた様々な実証が実現できるポテンシャルを持っており、「研究・開発・実証」が地続きで存在しているまちだと感じています。

 

実証で鍛える ― SAPがつくる“接点”と“成長”

SAPはどのようなプログラムですか。

 

佐久間さんのアイコン
佐久間さん:

SAPは、優れたアイデアを持ち、将来的に上場等を目指すような成長意欲の高い人材を輩出し、地域全体で起業家やスタートアップを育てていくという意識を醸成し、相模原版のスタートアップエコシステムを構築することを目指しています。

 

 

SAPの特徴について教えてください。

 

佐久間さんのアイコン
佐久間さん:

全国からエントリーが可能で、相模原市内の民間フィールドをはじめとする多様なアセットを活用した「実証」を軸にしており、その中で「繋がれる人の多さ」が大きな特徴です。

一つの実証を行うだけでも、市内企業、フィールド提供者、支援プレイヤーなど、多くの関係者が関わります。そして、それが単発で終わるのではなく、複数のフィールドで展開されることもあります。

そのプロセスの中で、起業家は様々な課題とぶつかり、多様なステークホルダーとの関わり方や顧客目線といったものを身につけていきます。BtoB、BtoG、BtoCと相手が変われば意思決定の構造も変わります。机上では学べない経験が、実証の現場にはあります。

プロダクトやソリューションの検討段階において、市民や地域のアセットからリアルなフィードバックを得ることで、実際の顧客づくりにつなげていく点も、参加されるスタートアップから評価をいただいています。

実証を通じて人とつながり、相模原を起点にした次のアクションが生まれる。
その動きそのものが、SAPの価値だと考えています。

市域や県域を超えたエコシステムの形成を目指して ― GLiSの目指すもの

GLiSについて概要を教えてください。

 

多良さんのアイコン
多良さん:

神奈川県と相模原市は、リニア中央新幹線神奈川県駅(仮称)の開設が予定される橋本駅周辺を中心に、県央・多摩地域やさがみロボット産業特区を含む広域エリアの産業アセットや支援プレイヤーとスタートアップをつなぐ「Greater Linear Startup Network(GLiS)」の取組を進めています。
GLiSでは、企業・大学・産業支援機関・金融機関といった支援プレイヤーがそれぞれのアセットやリソースを相互に活用・連携を進め、ディープテックをはじめとするスタートアップの成長をサポートし、独自のスタートアップエコシステムの形成を目指します。

具体的な活動として、支援プレイヤー同士による情報共有や支援の在り方などの議論を行う意見交換会の開催や、エリア内の起業機運を醸成するGLiS Meet Upを開催してきました。

 


横浜銀行との共催で実施された、第2回GLiS Meet Up【スタートアップサービスにおける社会実装のステップと資金調達】

 

GLiSの取り組みやイベントを重ねる中で、どのような気づきがありましたか。

 

多良さんのアイコン
多良さん:

GLiS Meet Up では、思いがけず学生が参加してくれたり、すでに起業している方や、企業に勤めながら起業を検討している方も一定数参加するなど、想像以上の広がりを感じています。
また、支援プレイヤーによる意見交換会も、毎回多くの方にご参加いただき、産学連携の可能性や、新事業開発に関する情報共有などが盛んに行われました。こうした取組を経て、2026年3月13日には、支援プレイヤーで構成されるGLiSコンソーシアムが立ち上がりました。
これまで相模原では、行政によるスタートアップ関連のセミナーや意見交換会などの開催は少なかったのですが、GLiSによる様々なイベントの参加率が想定以上に高く、改めて相模原でのスタートアップへの関心の高さを実感できました。
こうした場を継続的につくることが、挑戦したい人にとって一歩を踏み出しやすい環境づくりにつながるのではないかと感じています。

 


支援プレイヤーによる第1回意見交換会の様子

 

「3年間、関係性を築いてきた」土壌をつくる FUN+TECH LABOの取り組み

 イノベーション創出促進拠点(FUN+TECH LABO)はどのような取り組みを行ってきましたか。

 

滝田さんのアイコン
滝田さん:

JR東海が整備・運営する拠点であるFUN+TECH LABOに相模原市イノベーション創出促進拠点を設置しています。同拠点は、企業、スタートアップ、研究機関、学生等の交流を促進し、橋本駅周辺にスタートアップ・イノベーションエコシステムを形成することで、産業活性化及び市のブランド向上を図ることを目的にスタートしました。
これまでの3年間は、短期的な成果を追いかけるというよりも、まずは土壌をつくることに力を入れてきました。その結果、関わっている企業やメンバー同士の距離が近く、仲の良いコミュニティが形成されています。
新しく関わる方が相談に来たときも、担当者だけでなく、入居企業やコミュニティメンバーが一緒になって課題を考え、解決に向けて動いていく、そうした体制が整ってきました。
扱っているプロジェクトは、飛躍的に大きく進むものばかりではありませんが、中長期的なテーマを掲げながら、実証や研究開発、まちづくりに関わる取り組みが着実に動いていると感じています。

 

 

イノベーション創出促進拠点(FUN+TECH LABO)の特徴や大切にしている考え方を教えてください。

 

滝田さんのアイコン
滝田さん:

一つのコンセプトとして「シチズンドリブン」という考え方があります。
新しい技術が生まれたとき、それを専門家の世界だけにとどめるのではなく、市民の方にも親しみを持ってもらえるようにしたいと考えています。実証も、なるべく身近に触れられる形で行うことを意識しています。
イベントも企業向けだけでなく、一般向けや子ども向けのものを多く実施してきました。学校と連携した取り組みも進めています。
技術や実証を「特別なもの」にしない。地域の中に自然と溶け込ませていく。その積み重ねが、この3年間で築いてきたFUN+TECH LABOの土台だと感じています。

 

アイデアを、実装へと動かすために相模原へ

最後に起業家へのメッセージをお願いします。

 

滝田さんのアイコン
滝田さん:

相模原市で何か始めたいと考えたとき、まずは一人で抱え込まずに、イノベーション創出促進拠点(FUN+TECH LABO)を含めた地域の支援機関を活用してほしいと思います。アイデアがまだ固まっていなくても大丈夫です。相模原には一緒に考えてくれる支援者やプレイヤーがそろっています。何ができるかを一人で考えるよりも、地域の資源を前提に一緒に設計していくことが、サービスや事業の形をより良くしていくことにつながると思います。

 

佐久間さんのアイコン
佐久間さん

SAPやGLiSでは、プログラムの集大成として成果発表会も開催しています。
2026年3月16日には、「SAGAMIHARA INNOVATION FES 2026」の中で、SAPや技術系スタートアップ(GLiSで支援するスタートアップ)によるデモデイ(成果発表会)を実施します。
参加者の皆さんが取り組んできた実証や事業の成果を発信し、新たな連携や次の成長につなげる場も用意しています。今後もこうした発表の機会を通じて、相模原のエコシステムを広げていきたいと考えていますので、こういったイベントにぜひ足を運んでみてください。

 

2025年度の成果発表会の様子

 

GLiSテックプログラム DEMODAY 2026

キーワード

興味のあるキーワードを選んで、あなたにマッチする事例を探してみましょう。