事例・インタビュー

\ 活躍する起業家や支援の取り組みをご紹介 /

地域から起業を生み出す拠点へ — AGORA Hon-atsugiが生む“県央発”のチャレンジャー

神奈川県産業振興課 楠春菜、株式会社AGORA 長谷部信樹、小田急SCディベロップメント成岡勇太 

神奈川県では県内地域発の起業家を次々と生み出す「HATSU起業家支援プログラム」によって事業化の実現に向けた伴走型の集中支援を行い、起業家の創出を促進しています。

今回は、起業の準備段階にフォーカスする県央エリアの起業家創出拠点「AGORA Hon-atsugi」について、担当である楠さん、拠点運営を担う株式会社AGORAの長谷部さん、そして地域と拠点をつなぐ株式会社小田急SCディベロップメントの成岡さんにお話を伺いました。

「AGORA Hon-atsugi」の特徴

Q:本厚木というエリアの特徴と「AGORA Hon-atsugi」について教えてください。

(左)小田急SCディベロップメント成岡さん(右)株式会社Agora 長谷部さん
(左)小田急SCディベロップメント成岡さん(右)株式会社AGORA 長谷部さん


成岡さん:
本厚木を含む県央エリアは、横浜や川崎と比べても少子高齢化が進んでいる地域です。大きな企業もありますが、人口は少しずつ減ってきています。そうした中で地域を盛り上げていくには、新しい事業や新しい雇用が生まれていく必要がある。そのためには、起業や新規事業の創出が欠かせないと感じていました。

一方で、県央エリアには、起業家を支援したり、新規事業を生み出したりする拠点がこれまでほとんどありませんでした。だからこそ、この地域の中にもたくさんいるはずの「起業家の卵」を掘り起こしたいという思いがあり、この拠点が設置されました。

実際に支援をしていて感じるのは、地元愛の強い方が本当に多いことです。生まれも育ちも県央地域で、働く場所としてもこの地域を選んできた方が多く、自分の事業を通じて地域をよくしたい、盛り上げたいという思いを持っている人が多いのが、このエリアらしさだと思います。

20代から70代まで、多様な挑戦者が集まる

Q:「AGORA Hon-atsugi」には、どのような方が集まっているのでしょうか?

長谷部さん:

参加される方の幅はかなり広いです。年齢でいえば20代から70代までいらっしゃいますし、これまでのキャリアや考えている事業の方向性もさまざまです。

起業というと、ある種の典型的な人物像を思い浮かべることもあるかもしれませんが、実際にはそうではありません。地域で何かを始めたい人、長年温めてきたアイデアを形にしたい人、仕事の経験を生かして新しい事業に踏み出したい人など、背景は本当に多様です。だからこそ、この場では特定の型にはめるというより、それぞれの挑戦をどう前に進めるかを大切にしています。

学びの土台をつくりながら、自分の事業を深めていく

Q:「HATSU起業家支援プログラム」として厚木ではどのような支援が行われているのでしょうか?


長谷部さん:

オンラインとオフラインそれぞれの学習機会やメンターによる壁打ち支援、地域との接点づくりや人の紹介を行っています。起業や事業づくりに必要な基礎的な学びは大切ですが、それ以上に重要なのは、自分の事業に引きつけて考え、磨いていくことです。

参加者同士や運営との対話を重ねながら、自分の仮説を整理したり、考えを言葉にしたりする。そのプロセスを通して、事業の輪郭が少しずつ明確になっていく。そうした積み重ねが、このプログラムの価値だと思います。

また、拠点そのものが普段からイベントや交流の場になっているので、プログラムの期間だけで完結するのではなく、日常的な出会いや会話の中から、新しい挑戦の芽が生まれてくるのも特徴です。

参加者は「募集」だけで集まるわけではない

Q:チャレンジャーは、どのように知り申し込みしているのでしょうか?

令和7年度後期Agora Hon-atsugiチャレンジャー
令和7年度後期「AGORA Hon-atsugi」チャレンジャー


成岡さん:
一つは、神奈川県の取り組みとして、市町村の皆さんに協力いただいていることがあります。厚木市さんや海老名市さんなど、県央エリアの自治体にも募集の周知を手伝っていただいています。県だけでなく、市町村とも連携しながら、地域の中にいる起業家の卵を探している感覚ですね。


長谷部さん:
それに加えて、拠点として日頃からいろいろな人に出会っていることも大きいです。チャレンジャープログラムをやっていない時期でも、拠点でイベントや交流の機会をつくっているので起業をしたいと考えている人に徐々に広がっていっています。


楠さん:
「HATSU」以前の起業段階のフェーズに参加していた方や、支援を求めてきている起業の初期段階にいる方に声をかけて、次の挑戦につなげていくような動きは意識しています。待つだけではなく、接点のある人にこの取組を知ってもらうための働きかけが大事だと感じています。

起業家ニーズに寄り添うプログラム設計

Q:「AGORA Hon-atsugi チャレンジャー 」の取り組みについて教えてください。

令和7年度後期Agora Hon-atsugiチャレンジャー発表会の様子
令和7年度後期「AGORA Hon-atsugi」チャレンジャー発表会の様子


長谷部さん:
もともとは年1回でもいいのではないか、という話もありました。ただ、実際に起業を考える人たちの動きを見ていると、学校のように「4月から始まる」ものではないんですよね。起業したいと思うタイミングは人それぞれですし、思い立ったときに動けることのほうが大事だったりします。

そう考えたときに、年1回だとタイミングを逃してしまう人が出てきます。だったら、もう少し挑戦の入口を増やしたほうがいいのではないかということで、年2回の開催にしました。

結果的に、3年目以降はチャレンジャー数が倍以上になっています。運営の負荷は当然上がりますが、それでも、挑戦したい人が参加しやすい形にしたことには意味があったと思っています。

地域との距離の近さが、県央の支援の強み

Q:「AGORA Hon-atsugi」ならではの強みはどこにあると感じていますか?

「AGORA Hon-atsugi」は本厚木駅直結の商業施設「本厚木ミロード」 6階に入居


成岡さん:
やはり地域との距離の近さだと思います。たとえば物販系の事業であれば、「AGORA Hon-atsugi」が入居している、小田急の商業施設、本厚木ミロードの中で実際に売るようなケースもありました。

HATSU起業家支援プログラム」のチャレンジャーとして採択され、支援を受けた起業家が立ち上げた合同会社厚木珈琲も本厚木ミロードに出店し、クラフトコーヒーを販売しています。事業アイデアを考えるだけでなく、地域の中で小さく実践しながら確かめられるのは大きいと思います。

また、必要に応じて大学や地域の事業者を紹介するなど、地域連携のハブとして動くこともあります。これは拠点単体というより、私たちと「AGORA Hon-atsugi」が地域の中で関係性を持っているからこそできることです。支援というと、どうしてもプログラムの中だけを想像しがちですが、実際には地域との接続をどうつくるかも、とても重要です。

厚木という土地だからこそ、地域の人たちもチャレンジャーを大切に見てくれている感覚があります。そこは県央ならではの強みかもしれません。

「HATSU」から「SHIN」へ

Q:「AGORA Hon-atsugi」はどのような位置づけにあるのでしょうか?

神奈川県産業振興課 楠春菜さん
神奈川県産業振興課 楠さん


楠さん:
県としては、「HATSU起業家支援プログラム」に参加しながら、その先のステージも見据えて、ベンチャー企業支援拠点「SHINみなとみらい」の支援も一部体験できる導線をつくっています。

「SHINみなとみらい」で開催される勉強会やネットワーキングに足を運んでもらいながら、自分が次に進むべき方向をより具体的に見える化していく。そのうえで、より大きな成長を志す場合は、「SHINみなとみらい」の支援など、次のステージにつなげていくという流れを意識しています。

ただ、実際には接続の難しさもあります。

AGORA Hon-atsugi」では、いわゆるスモールビジネスの芽も丁寧に拾いながら支援しています。
一方で県としては、県経済の活性化に向けて大きく成長していくビジネス、特に社会課題解決型のスタートアップを生んでいきたいという考えがあります。
そうすると、どうしてもビジネスモデルのギャップが出てきます。

すべてがそのまま次のフェーズにつながるわけではなく、地域で活躍する企業を創出していくことも含めて、それぞれの事業に合った成長のかたちを見極めながら、次の一歩につなげていけること自体に大きな意味があると感じています。

まずは、挑戦する人の母数を増やすことから

Q:「AGORA Hon-atsugi」が担う意味をどのように捉えていますか?

「HATSU起業家支援プログラム」関係者が集う、「AGORA Hon-atsugi Challengers MEETUP!! vol.2」開催の様子
「HATSU起業家支援プログラム」関係者が集う、「AGORA Hon-atsugi Challengers MEETUP!! vol.2」開催の様子


長谷部さん:
やはり大事なのは、まず挑戦する人の母数を増やすことだと思っています。最初からスタートアップとして大きく成長する事業だけを対象にすると、どうしても裾野は狭くなってしまいます。
でも実際には、地域で始まる小さな事業の中に、大きく育つ可能性を持ったものもありますし、地域にとって重要な価値を生むものもたくさんあります。

だからこそ、入口を広く持ち、いろいろな挑戦を受け止める場が必要です。その中から、次のフェーズに進む人も出てくる。
県央でこの拠点が担っているのは、そうした挑戦の土壌をつくる役割だと思います。

最初の一歩を迷っている人にこそ来てほしい

Q:最後に、これから起業を目指す方や「挑戦したい」と思いながらもまだ踏み出せていない方へのメッセージをお願いします!

長谷部さん:

起業にはいろいろな形があり、自分の好きなことを仕事にして、それで暮らしていければ十分、という価値観の起業も多くありますし、それ自体はとても素敵なことだと思っています。

ただ一方で、少子高齢化や人口減少といった地域課題を考えたときには、やはり事業を少しずつ育てながら、雇用を生んだり、外から人を呼び込んだり、地域にお金を残したりするような視点も必要だと感じています。必ずしも最初から大きなスタートアップである必要はありませんが、自分の事業を少しでも育てていこうという意思を持つ人を応援したい。
AGORA Hon-atsugi」も、そうした挑戦を後押しする場でありたいと思っています。

 

楠さん:

まずは、自らの事業に対して未成熟な段階でも、起業したいという思いを持つ方は参加していただきたいです。一方で、事業の形が最初から明確に決まっていて、一人でどんどん進められる方であれば、もしかするとこのプログラムがなくても進めるのかもしれません。だからこそ、何から動けばいいかわからない方や、身近に相談できる相手がいない方に是非活用していただきたいと思っています。

このプログラムは、そうした起業をしたいと思う人の最初の一歩を支えるためにあります。メンターの皆さんの支援を受けながら、まだ輪郭のはっきりしない思いやアイデアを少しずつ形にしていく。そうしたプロセスに意味があると考えています。まずは応募してみる、その一歩を踏み出していただけたらうれしいです。

 

成岡さん:

最初の一歩を迷っている方の背中をそっと押すことが、私たちの役割だと思っています。迷ったら、ぜひ応募していただきたいです。手厚いサポートの中で、ゼロから最初の一歩を踏み出すお手伝いができればと思っています。「AGORA Hon-atsugi」には、これまで挑戦してきた先輩方がたくさんいます。そうした積み重ねも、この場の強みの一つだと感じています。

地域に根ざしながら、挑戦を少しずつ事業へと育てていく。その入口として、この拠点がこれからも県央エリアの新たな挑戦を支えていきます。

民間と市町村が運営するコワーキングスペースと連携した 「HATSU」関連支援拠点
AGORA Hon-atsugi
HATSU起業家支援プログラム
AGORA Hon-atsugi

神奈川県では、地域発の起業家を次々と生み出す「HATSU起業家支援プログラム」により、有望な起業準備者(チャレンジャー)に対して事業化の実現に向けた伴走型集中支援を行うことにより、起業家の創出を促進しています。厚木市内の起業家創出拠点「AGORA Hon-atsugi」で起業を目指すチャレンジャーを募集しています。

キーワード

興味のあるキーワードを選んで、あなたにマッチする事例を探してみましょう。