事例・インタビュー

\ 活躍する起業家や支援の取り組みをご紹介 /

先端技術だけではない。地域資源と人のつながりから挑戦を育てる小田原の起業支援

神奈川県産業振興課 中戸 将史、一般財団法人八三財団 椿谷 勇次 

海と山に囲まれ、歴史ある企業や豊かな一次産業が息づく小田原。都心からのアクセスと暮らしやすさをあわせ持つこのまちでは、近年、移住者やUターン人材による新たな挑戦が少しずつ増えています。

その動きを支えているのが、小田原など県西地域(小田原市、南足柄市、中井町、大井町、松田町、山北町、開成町、箱根町、真鶴町及び湯河原町)の地域性を生かした起業支援拠点「ARUYO ODAWARA」です。単に起業のノウハウを提供するだけではなく、地域の企業やプレイヤー、移住者同士のつながりを生みながら、小田原ならではの事業づくりを後押ししています。今回は、神奈川県の担当である中戸さんと、「ARUYO ODAWARA」の運営に関わる八三財団の椿谷さんに、小田原という地域の特性、「ARUYO ODAWARA」の役割、そしてこれから挑戦する人に向けたメッセージを伺いました。

「ARUYO ODAWARA」内観

小田原だからこそ生まれる挑戦がある

Q:小田原という地域には、どのような特徴がありますか?

中戸さんのアイコン神奈川県 中戸さん:

小田原は、自然が身近にありながら、新幹線で都心にもアクセスしやすく、暮らしと仕事のバランスが取りやすい地域です。そうした環境もあって、東京で働いていた人が移住先として選ぶケースも多く、チャレンジャープログラムでも毎年3割ほどが移住者という傾向があります。「ARUYO ODAWARA」の会員でも、移住者が大きな割合を占めています。

また、Uターンで地元に戻ってきた人が、「地域の課題に向き合いたい」「小田原で何か始めたい」と考えて挑戦するケースも目立ちます。こうした背景から、小田原を始めとした県西地域では単なる起業ではなく、地域や暮らしと接続した事業が生まれやすい土壌があると感じています。

椿谷さんのアイコン八三財団 椿谷さん:

拠点ごとにカラーはありますが、「ARUYO ODAWARA」では特に、自然、観光、地域振興、一次産業といったテーマに取り組む方が多い印象です。いわゆる都市型のITスタートアップとは少し異なり、この土地の資源や社会課題と向き合いながら事業を立ち上げていく人が多いのが特徴だと思います。

一般財団法人八三財団 椿谷さん、神奈川県産業振興課 中戸さん

「ARUYO ODAWARA」が目指すのは「地域に根ざしながら広がる事業」

Q:「ARUYO ODAWARA」では、どのような挑戦を支援しているのでしょうか?

中戸さんのアイコン神奈川県 中戸さん:

「ARUYO ODAWARA」では、一次産業や自然資源、地域企業との接点を生かせる領域を、意識的に強めてきました。神奈川県内にはさまざまな拠点がありますが、その中で「ARUYO ODAWARA」は、小田原らしい色を出していくべきだと考えてきたからです。

もともと県内の起業支援というと、IT系のイメージを持たれることも多かったのですが、「ARUYO ODAWARA」ではそれとは違う方向性として、地域資源や老舗企業、地域課題とつながる事業が育つ環境をつくってきました。その結果、同じような志向を持つ人たちが集まりやすくなり、応募者の傾向にも色が出てきています。

また、「ARUYO ODAWARA」で支援しているのは、単なるスモールビジネスではありません。地域に根ざしたテーマは一見スケールしにくく見えるかもしれませんが、まず県西エリアで形にし、その後に他地域へ横展開していくことは十分に可能です。地域性のあるテーマだからこそ、どう大きくしていくかを一緒に考えることを大切にしています。

地域企業との距離の近さが、小田原ならではの強み

Q:「ARUYO ODAWARA」の支援の特徴はどこにありますか?

中戸さんのアイコン神奈川県 中戸さん:

「ARUYO ODAWARA」は、地域企業や経営者との距離が近いことが大きな強みです。都心部のようにプレイヤーが無数にいるわけではないからこそ、「このテーマならあの会社」「この話ならあの人」といった接続がしやすい。実際に、チャレンジャーが地域企業と連携し、素材や場を借りながら実証や商品開発につなげている事例も出ています。

たとえば、地域企業の廃材を活用した商品開発や、地域のホテル・事業者への営業機会につながった例もあります。個人でゼロから営業するにはハードルが高いことでも、地域のネットワークが後押しになることで、最初の一歩が踏み出しやすくなるんです。

椿谷さんのアイコン八三財団 椿谷さん:

許可や申請の手続き、地域との調整など、事業を進めるうえでは実務的な壁もありますが、「ARUYO ODAWARA」では行政と拠点が比較的近い距離で連携しているので、そこも含めて支援しやすい環境があります。地域のプレイヤーにも見守られながら育っていけるのは、この地域ならではだと思います。

一般財団法人八三財団 椿谷さん

「人が集まる拠点」であることが、「ARUYO ODAWARA」の価値

Q:「ARUYO ODAWARA」は、他の拠点と比べてどのような違いがありますか?

「ARUYO ODAWARA」外観
椿谷さんのアイコン八三財団 椿谷さん:

「ARUYO ODAWARA」の大きな特徴は、コワーキングスペースとしての熱量が高く、チャレンジャー同士の距離が近いことです。実際に、卒業後も継続して利用している方がいたり、チャレンジャー同士が自発的に集まったりと、コミュニティとしての機能が非常に強い拠点だと感じています。

事務局がすべてをセッティングしなくても、自然と人がつながり、相談が始まり、連携が生まれていく。そうした空気感が、小田原ではできていると思います。

移住者が多い地域なので、最初は知り合いが少なく、地域との接点を持ちにくい人も少なくありません。だからこそ「ARUYO ODAWARA」では、「この人と話すと合いそう」「この人なら相談しやすそう」といった形で、人と人をつなぐ役割をとても大事にしています。

さらに、小田原では暮らしと仕事が分かれすぎていません。地域で暮らし、遊び、出会い、その延長線上で仕事が生まれる。そうした偶発性を生みやすいのも、この拠点の特徴です。無理にマッチングするというより、自然に混ざり合える環境をつくることを意識しています。

気軽に入れることが、挑戦の入口になる

Q:「ARUYO ODAWARA」では、どのような人たちを受け入れているのでしょうか?

中戸さんのアイコン神奈川県 中戸さん:

実は、最初から事業が固まっている人ばかりではありません。3割くらいは、まだ何も決まっていないけれど「何かやりたい」という気持ちを持って来る人たちです。もちろん、ある程度形がある人のほうが伸びやすい面もありますが、私たちはポテンシャルや地域でやっていく意志も重視しています。

「ARUYO ODAWARA」は、応募前の相談も歓迎しています。何をやるかが明確でなくてもいいし、「小田原など県西地域で何かしたい」という思いだけでもいい。まずは気軽に来て、この場の空気を感じてもらうことが大事だと思っています。隣のカフェからふらっと入ってきたり、ドロップインで使ってみたり、そうした入りやすさが、小さな挑戦の入口になっています。

令和7年度「おだわらチャレンジプログラム」成果発表会の様子

県との接続、その先の成長に向けて

Q:今後に向けて、どんな可能性や課題を感じていますか?

椿谷さんのアイコン八三財団 椿谷さん:

「ARUYO ODAWARA」で育ってきた事業の中には、県の他拠点や、より広いネットワークと接続していくことで、さらに可能性が広がるものもあります。実際に、もう少し上のフェーズに進めそうな人たちもいるので、見学やイベントなどを通じて、他拠点との接点を増やしていけるといいと感じています。

中戸さんのアイコン神奈川県 中戸さん:

小田原は経済圏としてある程度地域内で完結しやすいぶん、外との接続が相対的に弱くなりやすい側面もあります。だからこそ、県全体の支援メニューや、その先にどういう選択肢があるのかを、もっと見える形にしていくことが大切だと思っています。

一方で、小田原を始めとした県西地域にはすでに地域に根ざした起業や社会課題解決型の事業が育ちやすい環境があります。そこに外部との接続が加われば、より面白い挑戦が生まれていくはずです。

令和7年度「おだわらチャレンジプログラム」チャレンジャー

小田原で何かしたい。その気持ちが出発点になる

Q:最後に、これから挑戦したい人へのメッセージをお願いします!

中戸さんのアイコン神奈川県 中戸さん:

「ARUYO ODAWARA」は、最初から完成された事業プランを持っている人だけの場所ではありません。小田原を始めとした県西地域で何かしたい、地域のために何かやってみたい、そんな気持ちがあるなら、まずは気軽に相談に来てほしいです。応募前でも大丈夫ですし、まず場に来てみるだけでもいいと思います。ここで人と出会い、会話し、空気に触れることが、次の一歩につながっていくはずです。

椿谷さんのアイコン八三財団 椿谷さん:

「ARUYO ODAWARA」では、拠点、行政、地域プレイヤーが比較的近い距離で連携しています。だからこそ、一人で抱え込まずに、まずは地域の支援を使ってみてほしいです。小田原には、人と人がつながり、挑戦が育っていく土壌があります。何かを始めたいと思ったとき、その入口として「ARUYO ODAWARA」を活用してもらえたらうれしいです。

「ARUYO ODAWARA」 エントランス
民間と市町村が運営するコワーキングスペースと連携した「HATSU」関連支援拠点
ARUYO ODAWARA
HATSU起業家支援プログラム
県西地域で起業を目指す、かながわ”発”の起業家支援拠点「ARUYO ODAWARA」

神奈川地域発の起業家を次々と生み出す「HATSU起業家支援プログラム」により、有望な起業準備者(チャレンジャー)に対して事業化の実現に向けた伴走型集中支援を行うことにより、起業家の創出を促進しています。小田原市内の起業家創出拠点「ARUYO ODAWARA」で起業を目指すチャレンジャーを支援しています。

キーワード

興味のあるキーワードを選んで、あなたにマッチする事例を探してみましょう。