事例・インタビュー

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「使い捨て」のない社会を当たり前に。鎌倉発「Megloo」に学ぶ、神奈川で社会課題解決ビジネスを育てる方法。

株式会社カマン 善積 真吾

「KANAGAWA STARTUPS」がお届けするインタビュー。
神奈川県では県内地域発の起業家を次々と生み出す「HATSU起業家支援プログラム」によって事業化の実現に向けた伴走型の集中支援を行い、起業家の創出を促進しています。
今回は、神奈川県の「HATSU鎌倉(チャレンジャー)」の1期生であり、「ビジネスアクセラレーターかながわ(BAK)」の採択企業でもある、株式会社カマン代表の善積 真吾さんに、循環型容器シェアリングサービス「Megloo(メグルー)」の創業から現在に至るまでの歩みと、これから挑戦したい未来についてお話を伺いました。

Meglooの事業内容について教えてください。

善積さん:私たちは、地域全体でリユース容器をシェアする循環型のプラットフォーム「Megloo」を開発・運営しています。加盟店の飲食店でテイクアウトをする際、使い捨て容器の代わりにMeglooの共通容器で商品を受け取ることができます。利用者はQRを読み込んで数量を入力するだけで借りられ、食事を終えた後は、地域の加盟店や専用の返却ボックスでも返すことが可能です。

善積さん:課題となっていた容器の返却率や運用の手間を解決すべく、私たちはRFID技術を活用した新たな管理システムも開発しています。その技術を活用し、大規模イベントでのBAK(ビジネスアクセラレーターかながわ)の支援のもとで行う、湘南ベルマーレさんとのスタジアムでの大規模な実証事業も行いました。この実証では、返却動線の見直しといった物理的な改善も同時に行い、返却率は95%まで向上。現在は利用地域の拡大やイベント導入を進め、持続可能な仕組みづくりを追求しています。

利用者や利用店舗の方からはどんな反響がありますか。

善積さん:実際に使っていただく利用者さんや導入してくださる店舗さんからも、嬉しいお声をいただいています。利用者さんからは「使い捨てよりおいしく感じた」という声や、「日本でも当たり前になってほしい」といったポジティブな反応が寄せられています。店舗さん側からも「意外と手間がかからない」だけでなく、「環境意識の高い新規顧客が増えた」といった声が届いており、お店のブランド価値向上にも繋がっているようです。

現在の事業に至るまではどのような道のりだったのでしょうか。

善積さん:

現在の事業の根底には、息子が道端のゴミを拾う姿を見て「子どもたちにゴミだらけの世界を残したくない」と感じた原体験があります。ただ、そこからすぐにMeglooの事業にたどり着いたわけではありません。

神奈川県の起業家支援施策「HATSU起業家支援プログラム」には、まだ会社員で法人登記もしていない段階で参加しました 。当時は旅行系のサービスを考えていましたが、コロナ禍もあり、テイクアウト事業など複数のアイデアを試行錯誤していました 。会社員を続けながら挑戦できたので、リスクを抑えながら何度もピボットできたのは「HATSU鎌倉」の大きな魅力でしたね 。様々なトライアンドエラーを繰り返す中で、短期的な視点ではなく、「長期的にしっかり取り組みたいテーマは環境問題だ」と確信し、現在の事業に至りました 。

神奈川県、鎌倉市を起業の場所に選んだ理由は何ですか?

善積さん:私自身が鎌倉に移住したことが前提としてありますが、まだ起業を志して日が浅い頃に「HATSU鎌倉」に参加し、地域の方々と繋がれたことが大きいです 。

ビジネスの観点では、鎌倉が「大きすぎず、小さすぎず」な都市であることが魅力でした 。例えば、数万人規模の町で成功したモデルをいきなり東京に持っていくのは難しい 。その点、人口17万人、年間観光客2000万人の鎌倉で受け入れられた仕組みは、より大きな都市にも、逆にもっと小さな町にも展開できるという点で、拠点を置くフィールドとして非常に優れていると考えています 。サーキュラーエコノミーのような新しい挑戦を始めるには最高の場所です 。

県の起業家支援プログラムやコミュニティは、事業にどう活かされましたか?

善積さん:移住して1、2年の時期に地域のキーマンたちと繋がれたのは本当に大きかったです 。

その後の「ビジネスアクセラレーターかながわ(BAK)」は、過去の採択企業がプログラムをきっかけに大きく成長している話を複数の経営者から聞いていたので、ぜひ挑戦したいと考えていました 。実際に採択され、湘南ベルマーレとの大規模な実証実験が実現できたのは、このプログラムの後押しがあったからです 。

また、「SHINみなとみらい」の起業家コミュニティは、精神的な支えにもなっています。経営者は孤独になりがちですが、他の起業家が頑張っている姿などを見ると「自分もやらなきゃ」と刺激を受けますし、オンラインコミュニティなどでも、より生々しいリアルな情報交換ができます 。

善積さんはHATSU鎌倉のメンターとしても活動 写真はHATSU鎌倉のイベント登壇

今後の展望についてお聞かせください。

善積さん:スポーツイベントなどの導入を一過性の取り組みで終わらせず、年間を通して利用されるような持続的な仕組みへと進化させていきたいと考えています 。ただ、それには様々なコストという課題があるため、容器に企業のロゴを掲載する「サステナブルスポンサー」のような形で新たな資金循環の仕組みを構築しているところです 。

将来的には、サッカーだけでなく様々なスポーツやイベント、さらにはオフィスや街全体といった「日常」の場面にまでMeglooを広げ、社会の仕組み自体をサステナブルなものに変えていくことを目指しています 。

善積さんはHATSU鎌倉のメンターとしても活動 写真はHATSU鎌倉のイベント登壇

これから神奈川で起業を目指す方々へメッセージをお願いします。

善積さん:神奈川県は、新しい事業の「実証フィールドの宝庫」です。海、山といった一次産業の現場もあれば、最先端の工業地帯もある 。世界的な観光地もあれば、過疎化に悩む地域もある 。これほど多様な環境が凝縮された場所は他にありません 。

最後に、私がプレゼンなどでよく引用する言葉があります。「環境問題の最大の敵は、誰かが解決してくれるだろうという他人事な姿勢だ」 。まさしくその通りで、私たち一人ひとりが行動しなければ何も変わりません 。この記事を読んで、私たちの取り組みや、神奈川というフィールドに少しでも興味を持っていただけたなら、ぜひ一緒に社会を変えるアクションを起こしていきましょう 。

民間と市町村が運営するコワーキングスペースと連携した「HATSU」関連支援拠点
HATSU鎌倉
HATSU起業家支援プログラム

湘南・三浦半島エリアを中心とした、社会性と経済性の両 立を目指す、かながわ”発”の起業家創出拠点 「HATSU鎌倉」

神奈川県”発”の経済性を伴った社会起業家・インパクトスタートアップ・ゼブラ企業を生み出すエコシステムを運営しています。
鎌倉の起業家創出拠点「HATSU鎌倉」で起業を目指すチャレンジャーを募集しています。

企業情報

株式会社カマン

株式会社カマン

【事業内容】
リユース容器シェアリング「Megloo」の開発・運営
サーキュラーエコノミー・コンサルティング

【企業サイト】
https://kaman.co.jp/

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