藤沢で挑戦を地域ぐるみで支える。産学官連携と多様な拠点が育む「創業しやすいまち」
藤沢市経済部産業労働課 高木貴大、湘南産業振興財団 佐藤和彦
藤沢市では、湘南産業振興財団や市内大学、企業、金融機関などと連携しながら、創業前から成長期までを支える地域ぐるみの支援体制づくりが進められています。
その背景にあるのは、産業都市としての集積と、文教都市としての知的資源、そして「湘南藤沢で働く・暮らす」魅力が重なり合う、この地域ならではの土壌です。大学発スタートアップの育成、創業希望者の掘り起こし、地域企業との接続、さらには実証や事業化に向けた伴走まで。藤沢市は、多様なプレイヤーを巻き込みながら「創業しやすいまち藤沢」の実現を目指しています。
今回は、藤沢市経済部産業労働課の高木さんと、湘南産業振興財団の佐藤さんに、藤沢エリアにおける起業支援・スタートアップ支援の特徴について伺いました。
産業都市と文教都市、両方の顔を持つ藤沢
Q:藤沢市として、スタートアップ・ベンチャー企業の支援や起業の支援に取り組むうえでの地域的な特徴や前提条件をどのように捉えていますか?
藤沢市 高木さん:
藤沢市は、日本を代表する輸送用機械メーカーの生産拠点や、さまざまな企業の研究開発拠点が立地する産業都市である一方、慶應義塾大学、日本大学、湘南工科大学、多摩大学、横浜国立大学の5つのキャンパスを有し、若者世代が流入する文教都市としての性格も有しています。
これら優良企業や大学の人材・知識・技術・ノウハウなど、豊富な人的・知的資源を結びつけ連携することができれば、幅広い分野において新しいアイデアが生まれやすく、新産業の創出やベンチャー企業育成、それに伴う産業全体の活性化が可能だと考えています。
また、藤沢市は海や緑に囲まれた穏やかな環境と首都圏からの近接性が共存し、自然と都市のどちらも選べる、「湘南ライフ」を体現できるバランスの良いまちです。「湘南藤沢で働く・暮らす」というスタイルが、クリエイティブな人材を引き寄せる魅力になっており、オンとオフの切り替えがしやすい環境が整っているので、起業家やクリエイターに良い影響を与えていると感じています。
公的インキュベーション施設が複数ある、藤沢ならではの支援基盤
Q:藤沢市ならではの強みやユニークさはどこにあると感じていますか?
藤沢市 高木さん:
藤沢市は、産学官が連携し、湘南産業振興財団が事務局を務める「湘南新産業創出コンソーシアム」により、市内で創業をめざす人やベンチャー・スタートアップ等に対し、成長段階に応じた地域ぐるみの支援を行っています。
特に、大学連携型の「慶應藤沢イノベーションビレッジ(SFC-IV)」と、藤沢駅近に位置する都市拠点型の「湘南藤沢インキュベーションセンター(SFIC)」の二か所の公的インキュベーション施設を有している点は、基礎自治体としても特徴的だと思います。
そのほかにも、全国でも珍しい民間運営のものづくり拠点施設「湘南藤沢インキュベーションLABO」、さがみロボット産業特区のロボット企業交流拠点施設「ロボリンク」、日本初の製薬企業発サイエンスパークである「湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)」など、企業のニーズに応じた多数のインキュベーション施設が立地している点は、強みであると考えています。
大学発スタートアップの成長を支える、慶應藤沢イノベーションビレッジ
Q:「慶應藤沢イノベーションビレッジ(SFC-IV)」の存在は、藤沢のスタートアップ支援においてどのような意味を持っていますか?
湘南産業振興財団 佐藤さん:
「慶應藤沢イノベーションビレッジ(SFC-IV)」は、大学連携型起業家育成施設として、神奈川県、中小企業基盤整備機構、慶應義塾大学、藤沢市の4者が連携する公的なインキュベーション施設であり、スタートアップの輩出に向けた支援を行っています。
「慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(慶應SFC)」をはじめとした大学発シーズの事業化や、産学連携した研究開発の社会実装に向けて、現地のインキュベーションマネージャーが伴走支援しています。
また、慶應藤沢イノベーションビレッジ入居企業や大学発スタートアップの成長支援においては、入居企業への資金的な支援だけでなく、「ヒト・モノ・カネ・情報をフル活用して、事業を軌道に乗せてもらうこと」を最優先事項として考えています。
その実現のために、藤沢市はSFC-IVに当財団のインキュベーションマネージャーを常駐させ、事業拡大のために必要な情報を提供しつつ、入居企業と二人三脚で歩む仕組みを構築しています。
発掘からブラッシュアップ、社会実装までを担う「湘南ビジネスコンテスト」
Q:湘南ビジネスコンテストは、藤沢市の支援導線の中でどのような位置づけにありますか?
湘南産業振興財団 佐藤さん
湘南ビジネスコンテストは、藤沢をはじめとした湘南エリアでの創業希望者や創業後間もない事業者に対し、そのビジネスプランのブラッシュアップや事業成長の促進を狙う「応援型ビジネスコンテスト」として実施しており、発掘、ブラッシュアップ、社会実装、資金調達、すべてのフェーズに対応した仕組みが整っています。
これから創業してみたい方や、創業してまだ始まったばかりという方々が応募できるコンテストであり、皆さまがお考えになられているビジネスプランが、どうやって湘南という地域に貢献できるのかというところを中心に、収益性なども踏まえて審査しています。
本コンテストの一番の特徴は、手厚い支援というところです。申請する前は、皆さまの思いを形にするための事業計画のブラッシュアップ支援をしておりますし、エントリーしてファイナリストに選ばれたあとも、地元企業とのマッチングや地元メディアへの掲載といったかたちで、事業のPRや加速をサポートしています。
単発で終わらせない、開催前後の継続支援
Q:ビジネスコンテスト後、受賞者や挑戦者をどのように継続支援へ接続していますか?
湘南産業振興財団 佐藤さん
本コンテストが「日本一手厚い支援を目指して」と謳っている所以は、コンテスト開催前の約2か月間の事業内容ブラッシュアップと、開催後のマッチング支援が充実しているためです。
開催後の継続支援については、事務局経由で行政連携やBtoBマッチング案件紹介、メディア出演の斡旋などのフォローをすることは当然ですが、本コンテストは地元企業にも相応の知名度がありますので、業務提携や実証実験先としての連携といった成果もあがっています。
起業前から成長期まで、藤沢市と財団が役割分担して支える
Q:藤沢市と湘南産業振興財団は、起業前から成長期までをどのような役割分担で支えていますか?
湘南産業振興財団 佐藤さん:
産業競争力強化法に基づき国から認定を受けた藤沢市の「創業支援等事業計画」を基本に、「湘南新産業創出コンソーシアム」による事業により、創業者の掘り起こしを図る創業機運醸成事業や、当財団による創業者への伴走支援のほか、市の制度融資や補助金メニューなどの創業資金関連の情報を提供しております。
また、大学生に対して市内起業家の基調講演や意見交換の場を提供するスタートアップ支援フォーラムも実施しています。大学生と市内起業家を接続することで、起業家精神のマインドを醸成し、藤沢市内における創業者の増加を目指しています。
地域ネットワークを活かして、実証や企業連携につなげる
Q:実証実験や企業連携を進めるうえで、藤沢ならではの強みはどこにありますか?
藤沢市 高木さん:
これまで、さまざまな分野で関連部署の協力も得ながら、公的な場の提供によって実証実験が行われてきました。
また、藤沢ならではの仕組みとして、「湘南新産業創出コンソーシアム」のネットワークを活用して企業連携を進めています。今後も、「さがみロボット産業特区」や「藤沢サステナブルスマートタウン(Fujisawa SST)」などとも連携しながら、藤沢市の資源を有効活用して実証実験や企業連携を進めていきます。
創業しやすいまちを目指し、支援の輪を地域全体へ広げていく
Q:エコシステム形成を進める中で、藤沢市として大切にしている価値観や姿勢は何でしょうか?
藤沢市 高木さん:
藤沢市の創業を地域全体で支えるエコシステム形成の中で、重要な視点はオープンイノベーションです。多様なプレイヤーを巻き込むことで、新しいアイデアが生まれ、創業・新産業創出につながると考えております。
今後も官民問わず各創業支援機関との連携も進めるとともに、「創業しやすいまち藤沢」の実現に向けて、一歩踏み出したいと思う方を後押しできるような体制を構築し、発信していきたいと考えております。
挑戦に共感し、支える人がいるまちへ
Q:最後に、これから起業を目指す方や、藤沢で挑戦したいと考えている方へのメッセージをお願いします!
湘南産業振興財団 佐藤さん:
藤沢には、あなたの挑戦に共感し、応援する仲間がたくさんいます。起業は孤独な道のりだと思います。ただ、藤沢には市や財団だけでなく、地元の経営者や市民が温かく、時に厳しくサポートしてくれる風土があります。失敗を恐れず、まずは藤沢に飛び込んできてください。私たちが全力でその一歩を支えます。
藤沢市 高木さん:
湘南の豊かな自然と多様なビジネスシーンが共存し、新しい価値を生み出すのに最適な場所です。創業支援の取組もさらに加速させておりますので、「創業しやすいまち藤沢」に今後も注目いただきたいです。ぜひ、藤沢での創業に一歩踏み出していただければと思います。