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Synk株式会社 代表取締役 菅原 沙耶さん(KSAPボードとともに)

「KSAP」シード編・アーリー編採択のSynk株式会社、鎌倉から訪日ファミリー向け保育士同行サービスという新しい体験づくりへの挑戦

Synk株式会社 菅原 沙耶

神奈川県鎌倉市で創業したSynk株式会社は、訪日ファミリー向けのチャイルドコンシェルジュサービス「Familient(ファミリエント)」を展開し、神奈川県の「かながわ・スタートアップ・アクセラレーション・プログラム(KSAP)」のシード編・アーリー編に連続で採択されています。

近年、訪日外国人旅行者が増え続けるなかで、子ども連れの旅行者が旅先で抱えている課題があります。同社が2026年2月に公表した調査(日本旅行に関心のある米国の子育て世帯150名対象)では、旅行中に大人の観光時間を確保したいときにどうしているかという問いに対し、「諦めている」という回答が66%を占め、子どもと過ごす時間と、大人が旅先で得たい体験との両立について、課題感が浮き彫りになりました。

一方で、国内の保育士は、高い専門性を求められながら待遇がそれに見合わないという構造的な課題も抱えています。この二つの課題を一本の線でつないだのがSynk株式会社です。

本インタビューでは、Synk株式会社 代表取締役の菅原 沙耶さんに、「KSAP」での取り組みについてお伺いしました。

事業内容や取り組みについて教えてください

弊社は訪日ファミリー向けのチャイルドコンシェルジュサービス「Familient(ファミリエント)」を展開しています。

訪日外国人ファミリー向けの高品質な託児サービスとして、東京のトップラグジュアリーホテルにも導入いただいており、行政に正式登録された保育事業として運営しています。サービスを担当するのは、国家資格を有する保育士・看護師・助産師のみで構成された専門人材です。多言語での対応に加え、医療機関との連携体制も整えています。

また、ホテルの客室内や館内スペースだけに留まらず、旅のスタイルに応じて柔軟に対応できることも特徴です。お預かりしている時間には、子どもたちの学びや成長につながる和文化体験も提供しています。このように、日本の保育の専門性と、ホテル滞在に求められるホスピタリティ水準を融合することで、ファミリー旅行そのものの滞在価値を高めるサービスを提供しています。

「Familient」の品質と専門性については、ヨーロッパを中心に国際的な高付加価値旅行を取り扱うラグジュアリー旅行業コンソーシアム「Serandipians by Traveller Made(セランディピアンズ)」より、チャイルドケア・サービスとして世界で初めて「Preferred Experiences Partner(プリファード・エクスペリエンス・パートナー)」に認定されました。

この認定により、グローバルネットワークを通じて、世界中のラグジュアリートラベルデザイナーや旅行代理店と直接連携し、ファミリー旅行者にユニークなコンシェルジュサービスを提供できるようになっています。

訪日ファミリー向けチャイルドコンシェルジュサービス「Familient」
訪日ファミリー向けチャイルドコンシェルジュサービス「Familient」

創業のきっかけについて教えてください

創業のきっかけは、自分が感じてきたことと、キャリアとして重ねてきたことが、あるタイミングで交差したことでした。

最初は客船のクルーとして働き、世界を5周しました。その後もラグジュアリートラベルの分野で20年間キャリアを重ね、経済的に豊かな国にも、そうでない国にも足を運びました。そこで実感したのは、成熟した社会とは教育がしっかりしている社会だ、ということです。この実感が、今の事業の出発点になっています。

その最後の2年間がコロナ禍と重なり、旅行のビジネスは完全に止まりました。時間ができたことで、意識は自然と、もともと関心のあった教育へ戻っていきます。同じ教育を受けても、それを受け取って活かせる人とそうでない人がいる。その違いはどこから来るのかと考えるうちに、人間の育ちそのものに関心が移り、この時期に保育士資格を取得しました。

ところが、いざ現場で働こうとしたとき、保育士に求められるスキルと専門性の高さ、そしてそれに見合わない処遇との隔たりに驚きました。これほどの専門性をもって、一人ひとりの子どもの育ちに寄り添ってくださっている。そのことを、それまで自分は知らずにいたのです。
この方たちが誇りを持って笑顔で働ける状態をつくらなければいけない。そう思いはしたものの、当時の自分にできることは、まだ何もありませんでした。

転機は、インバウンドが回復したあとに訪れました。訪日旅行者の消費のあり方を間近で見て気づいたのは、旅先での支出の水準が、国内の相場とは大きく異なるということです。それならば、保育士資格を持ち、ラグジュアリートラベルの世界で旅行業を続けてきた自分が、その二つを掛け合わせればいい。旅の中の保育という形で提供できれば、保育士の待遇を国内の水準から大きく引き上げられるのではないかと考えました。

Synk株式会社 代表取締役 菅原 沙耶さん
Synk株式会社 代表取締役 菅原 沙耶さん

創業期から現在まで、事業や体制に変化はありましたか?

創業期は、訪日観光客向けの託児としてサービスを展開していました。同じ領域の事業者は他にもありますが、弊社は旅行業と保育のダブルライセンスを持っています。その強みをどう活かすかが、当初からの課題でした。

その答えが見えたのが、「KSAP」シード編をきっかけに実施した海外のユーザーインタビューです。そこで分かったのは、旅行者が価値を置いているのは、お預かりすること自体ではないということでした。

日常的にベビーシッターを雇っている家庭も多く、安全に見守るという機能は、すでにご自身の中で解決されている。求められていたのは、その先にある「その時間に子どもが何を得られるか」でした。

そこで私たちは「体験」を主軸に置き、保育士が同行する体験という形へと軸足を移しています。子どものプロが監修したものを、子どものプロが届ける。だからこそ保護者は安心して出かけられる、という設計です。訪日される海外のお子さんに向けた体験ブランドを目指しています。

サービス名も、この海外インタビューを経て変更しました。もともとは親の時間を創出したいという思いから「Parent Time(ペアレント・タイム)」としていたのですが、英語では離婚した親の面会交流を指す言葉でもあり、意図とはまったく違う受け取られ方をしてしまったのです。呼び方ひとつでサービスの印象が大きく変わることを、このとき痛感しました。そのため現在は、子どものケアを表す際はチャイルドケア、あるいはファミリーコンシェルジュ、チャイルドコンシェルジュという言い方に統一しています。実際に話してみなければ分からないことが、たくさんありました。

保育のプロが監修・同行する子ども向け体験プログラム
保育のプロが監修・同行する子ども向け体験プログラム(出典:Synk株式会社 プレスリリース)

事業を展開する中で、直面した課題などはありますか?

東京のトップラグジュアリーホテルにも、弊社のサービスを導入していただいています。ホテルが紹介する、信頼できるサービスを使いたいというお客様からのご依頼が一定数あるため、この領域は今後も継続していきます。そのうえで、体験としての価値をより明確な形にしていくことが、いまの課題です。

難しさは、言語化の部分にもあります。弊社のお客様は、およそ85%が欧米・北米の方です。国や州によって法制度が異なり、日本のような国家資格としての保育士が存在しない地域もあれば、基準そのものが違う地域もあります。共通の物差しがないなかで、保育士のスキルや専門性の高さを、価値として伝わる言葉に置き換えていく。これがとても難しいと感じています。

安全の基準についても同じことが言えます。何をもって安全とするかは、国や地域によってかなり異なります。できるのは、その違いを一つずつ理解し、確認しながら整えていくことだけです。基準が分かれる場合は、より安全性の高い方に合わせ、重視しているという声が多い項目を軸に据えています。とりわけ富裕層の旅行者は、安全面は満たされていて当然という前提で来られますから、こちらも高い基準で臨んでいます。
安全を第一に置く以上、時間的なコストも相当かかります。この守りを固める取り組みに、終わりはありません。

もうひとつ、事業が成長する過程で直面しているのが採用の課題です。ご興味のある方や、連携できそうな事業者さんとつながりたいと考えています。体験を一緒に作れる方、サービスを導入してくださるホテルや旅行会社の方。そして人材の面では、フリーランスや個人が所属する協会など、きちんとオーガナイズしてくださるところと組んで確保していきたいと思っています。

Synk株式会社が2026年2月に公表した訪日ファミリー旅行者の調査結果
Synk株式会社が2026年2月に公表した訪日ファミリー旅行者の調査結果

起業の地、鎌倉での取り組みについて教えてください

弊社は鎌倉で創業していることもあり、鎌倉発の体験として「FORBIDDEN KAMAKURA ZEN & RETREAT(フォービドゥン・カマクラ・ゼン・アンド・リトリート)」を展開しています。実は8年前から構想していたもので、個人事業主として旅行業を始めたときから、いつかやりたいと思っていた企画です。

きっかけは、鎌倉の住民としての実感でした。大仏へ行き、鶴岡八幡宮へ行き、小町通りで食事をして帰る。それはそれで良いのですが、禅の精神をはじめ、知っていただきたいことはもっとたくさんあります。通り一遍の観光で帰っていかれるのが、どうしてももったいなく感じていました。当時は旅行業登録をして市などにも相談に行きましたが、さまざまな事情があり、構想のままで終わってしまいました。

動き出したのは、インバウンド向けの保育事業を本格的に始めたタイミングでした。北鎌倉・円覚寺のご住職にお話をしに行ったところ、子ども向けに禅の考え方を伝えることに、強い関心と意義を感じてくださったのです。自分を見つめ、自分を大切にすることを、小さい頃から伝えていきたい。日本人か外国人か、どの宗教かということではなく、という考え方でご協力くださるようになりました。

ところが販売を始めてみると、実際に参加されるのは大人の方が中心でした。座禅は本来お坊さんの修行ですが、現代の生活に合う形で触れられるようにすると、皆さん晴れやかな表情で帰っていかれます。そこに価値があると感じ、内容をもう一段深めました。1泊2日に広げ、鎌倉武士が大切にしていたものを体感できる構成にしています。MICE(マイス:ビジネスイベントの総称)にも需要があるのではないかと考えて、旅行会社として提供しています。

この企画が、令和8年度の日本博(独立行政法人日本芸術文化振興会/文化庁)の補助事業に採択されました。「日本の美と心を伝える」国のプロジェクトに採択されることは、弊社の作る体験が本物であると認めていただけることでもあります。今後ファミリー向け体験を磨いていくうえで、大きな後押しになります。

北鎌倉・円覚寺での座禅体験
北鎌倉・円覚寺での座禅体験
「FORBIDDEN KAMAKURA ZEN & RETREAT」
「FORBIDDEN KAMAKURA ZEN & RETREAT」

「KSAP」シード編・アーリー編と続けての採択、振り返っていかがですか?

今があるのは、本当に「KSAP」のおかげだと思っています。たとえばシード編のユーザーインタビュー。正直に言えば、とても腰が重い取り組みです。お客様候補のお時間をいただき、そのうえで何かをお願いするのは、心理的なハードルが高い。時間もかかりますし、自分が欲しい答えではないものが返ってくるかもしれないという不安の中進めなければなりません。ただ、シード編ではこれをやらないと次のステップに進めないため、腹を括って取り組むことになりました。結果として、やってよかったと思っています。ここが全ての起点になると理解できましたし、今も続けています。

見えてきたことは、国内と海外で対照的でした。国内については、ほぼ想定通りです。保育士の皆さんは保育の仕事が好きで続けたいと考えている一方、さまざまな事情から負担を感じている。どうすればより力を発揮できるのか、どうすれば復帰し、続けられるのかが明確になりました。販売パートナーについては、自分が重要だと考えてお伝えしていた点が、相手にとっては前提条件にすぎなかったと分かりました。そのうえで何を足せばよいのかも見えてきて、方向性そのものは間違っていなかったと確認できたことが、大きな収穫です。一方の海外向けインタビューは、先ほどのサービス名の変更につながりました。

アーリー編で大きかったのは、専門家の方々をご紹介いただけたことです。国際弁護士の方や大手損害保険会社とつないでいただき、自力のアプローチでは絶対に築けなかった関係性が生まれました。大手の保険に加入でき、規約も国際弁護士の方と一緒に整備できたことで、ようやく足場が固まった実感があります。ここのネットワークのおかげです。

事業の中身も、かなり一緒に磨いていただいた感覚があります。社会性と収益性という論点がありますが、この事業は思いとしては社会性から始まっています。ただ、株式会社として続けていくなら収益性も欠かせません。細部を詰めていくと、私はどうしてもどちらかに寄ってしまう。そのたびにメンターの方が軌道修正してくださったり、バランスの取れた視点に戻してくださったり、別のアプローチや機能の可能性を示してくださいました。目指す世界観をぶらさずに、収益性を損なわずに事業を続けていく。その部分で、自分にはない知見をたくさん授けていただきました。

Synk株式会社 代表取締役 菅原 沙耶さん(SHINみなとみらい会議室にて)
Synk株式会社 代表取締役 菅原 沙耶さん(SHINみなとみらい会議室にて)

ベンチャー支援拠点「SHINみなとみらい」の活用を教えてください

ベンチャー支援拠点「SHINみなとみらい」は、足を運ぶだけでも会話のなかから新しいきっかけが生まれる場所です。支援者の方たちとも、入居している方たちとも日常的に交流があり、とにかく話しやすい雰囲気があります。最近も人を探しているという話をしたところ、看護協会をご紹介くださる方や、個人的につながっている看護師さんをご紹介しますという方が現れました。気兼ねなく相談できる。この空気があることを、ありがたく感じています。

「かながわビジネスオーディション2026」では横浜銀行賞を受賞されました。受賞後の何か変化はありましたか?

ご縁がつながり、横浜銀行様からご融資の機会をいただきました。弊社にとって初めての資金調達でしたので、横浜銀行賞をいただけてよかったと思っています。

「かながわビジネスオーディション2026」授賞式の様子
「かながわビジネスオーディション2026」授賞式の様子
東京都の女性ベンチャー成長促進事業「APT Women」第10期生にも選出
東京都の女性ベンチャー成長促進事業「APT Women」第10期生にも選出

今後の取り組みについて教えてください

最近は提携の取り組みも増えてきました。とくに効いているのが、行政の支援事業に参加していることです。ある旅行会社様とは個人事業時代を含めて十数年のお付き合いがありましたが、支援プログラムに採択されたことをお伝えしたところ、「興味があるからぜひ詳細を聞かせてほしい」とご反響をいただき、資料をお送りしてすぐに決まりました。一社決まると次が決まり、それが揃うとまた次につながる。実績が積み上がっていく手応えがあります。

ラグジュアリートラベル業界で権威のあるコンソーシアムから、チャイルドケアのサービスとして初めて認定をいただいたことも大きかったです。子ども専門の体験を提供する会社としては珍しい存在として扱っていただけたため、今後目指す方向性を対外的に発信するうえで、良い後ろ盾になっています。

現在は訪日観光客向けのチャイルドケアに注力しているため、これだけをやっている会社だと思われがちです。ただ、私たちがやりたいのは、日本の素晴らしい福祉産業のスキルを、世界のラグジュアリー領域に展開していくこと。ラグジュアリー消費と日本のケアを接続することです。サービスの新規性や他社との違いをよくお尋ねいただきますが、インバウンドや富裕層というキーワードは、どうしても華やかな面ばかりが取り上げられます。だからこそ、私たちがなぜこの事業に取り組んでいるのか、その想いを事業を通じて伝え続けていきたいと考えています。

その先には、全国の保育士さんに向けたリスキリングプログラムのような、一社だけでは届かない規模の取り組みも見据えています。共創であれば形にできるはずですので、これまで以上に進めていきたいと考えています。

プライベートジェット運航のSKY TREKとの業務提携の取り組み
事例:プライベートジェット運航のSKY TREKとの業務提携の取り組み

最後に、これから起業する方へのメッセージをお願いします!

改めて、今があるのは「KSAP」をはじめとした様々なご支援のおかげだと思っています。とくに「KSAP」はシード編・アーリー編と続けて採択いただき、支援を通じた気づきの機会から、その後の実績づくりまで、事業成長のきっかけをいくつも得ることができました。

日頃はなかなかリーチできない相手にも、メンタリングや交流を通じてアプローチするチャンスが生まれました。
ひとつひとつの取り組みが、着実に次のチャンスにつながっています。迷っているなら、まずは「KSAP」にチャレンジすることをおすすめします。

神奈川県発「社会課題解決型スタートアップ」の成長を支援するプログラム​
かながわ・スタートアップ・アクセラレーション・プログラム(KSAP)
かながわ・スタートアップ/アクセラレーション・プログラム(KSAP)」

「かながわ・スタートアップ/アクセラレーション・プログラム(KSAP)」は、社会課題の解決に取り組むスタートアップを伴走支援するプログラムです。
年間を通じて、起業初期を対象としたプログラム「KSAPシード編」と、さらなる事業成長を目指す企業を対象としたプログラム「KSAPアーリー編」の2つを実施します。

企業情報

Synk株式会社

Synk株式会社

【事業内容】
旅行業法に基づく旅行業、コンシェルジュサービスの提供、保育所および託児所運営、育児支援人材の育成、産前産後ケア事業等

【企業サイト】
https://www.synkllc.com/

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