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「推しに旅を贈る」新しい推し活で、地域に物語を。HATSU起業家支援プログラム採択の見えまストレス × Hameeが小田原から広げる「推しVacation」

株式会社見えまストレス 代表取締役 板垣 一志、Hamee株式会社 新規事業/開発部 中島 理恵

株式会社見えまストレスとHamee株式会社は、ファンが“推し”に旅をプレゼントし、推しが旅先から写真やお土産を返礼品として届ける新しい推し活サービス「推しVacation(推しバケ)」を共同で運営しています。見えまストレスの新規事業として生まれたこの企画は、2025年度、小田原市内の起業家創出拠点「ARUYO ODAWARA」における、神奈川県の「HATSU起業家支援プログラム」に採択されました。

本インタビューでは、株式会社見えまストレス 代表取締役の板垣一志さんと、Hamee株式会社 新規事業/開発部の中島理恵さんに、推しVacationが生まれた経緯やHameeとの共同運営、神奈川県の支援プログラムをきっかけに広がった取り組みについてお伺いしました。

事業内容や取り組みについて教えてください

板垣さん:私たちは「推しVacation(推しバケ)」という企画を運営しています。推し活の経済的なパワーを起点にして、地域振興、観光振興、産業振興につなげていきたいと考えています。

仕組みはシンプルです。ファンの方がECサイトで「応援プラン」を購入し、それを原資に“推し”と呼ばれるアイドルやタレントが旅に出ます。推しは旅先で自撮りした写真を生写真にしたり、お土産を選んだりして、返礼品としてファンに届けます。後日、報告会を開いて、「旅、楽しかったよ。ありがとう」とファンと一緒にオフ会を通じてファンへ感謝を伝え盛り上がる。ここまでをひとつのパッケージにしています。

ファンが推しに何かを贈ることはあっても、推しからファンにお土産が届くという逆のパターンは、これまでほとんどありませんでした。そこに推しが訪れる観光地が加わることで、タレント、ファン、地域の「三方よし」の関係がつくれるのではないかと考えています。

図:推しVacationの企画の流れと、推しが参加するメリット(出典:推しVacation公式サイト)
図:推しVacationの企画の流れと、推しが参加するメリット(出典:推しVacation公式サイト)

推しVacationは、どのようなきっかけで生まれたのですか?

板垣さん:以前進めていたビジネス案を断念し、次のビジネス案を考えていたとき、ふと「推し活ってストレス解消になるんじゃないか」と思いついたのが始まりです。

そこで試しに、ライブ配信アプリで投げ銭をしてみたんです。そのなかで、私自身は、応援したことが何か形に残ったり、後から振り返れる思い出になったりすると、もっとうれしいのではないかと感じたんです。

そこから思いついたのが、推しからファンへ、旅先の写真やお土産が届く仕組みです。ちょうど私が小田原に住んでいて、観光地がすぐ近くにあったことも大きかったですね。2025年にこの構想を思いつき、そこから企画のページをつくって、タレントのブッキングを始めました。

写真:株式会社見えまストレス 代表取締役 板垣さん
写真:株式会社見えまストレス 代表取締役 板垣さん

見えまストレスの創業と、「KSAP」への採択について教えてください

板垣さん:もともと私は、動画配信などを支える企業のグループ会社で、Web制作・運用を手がける会社の代表を務めていました。

ちょうどコロナ禍にさしかかる直前の時期で、新規事業を考えることになった際、本業にとらわれずに発想したいと思い、働く人のストレスを可視化する仕組みをつくれないかと考えたのが、見えまストレスの原点です。

しかしながらこの案は、コロナ禍により前職での継続が難しくなりました。

アプリの開発にはお金もかかりますし、ひとりで独立すれば信用もありません。そこで、神奈川県の「かながわ・スタートアップ・アクセラレーション・プログラム(KSAP)」への採択を目指しました。リモートワークの広がりなどでストレスへの関心が高まっていた時期とも重なり、2020年、前職に籍がまだありましたが私個人の活動として採択されました。

その後、KSAPの期間が終わる頃に法人化して独立しました。現在はWeb制作の受託やディレクションを事業の基盤にしながら、推しバケに取り組んでいます。社名にもある「ストレス」から「推し活はストレス解消になるのでは」と発想した推しバケは、いわば突然変異のようにして生まれた事業ですね。

図:推しVacationが描く循環モデル
図:推しVacationが描く循環モデル

実証実験では、どのような旅が生まれましたか?

板垣さん:私はずっとWeb制作の現場にいたので、アイドル業界との接点がありませんでした。そこで、学生時代からつながりのある方が設立したインターネットラジオ局「下北FM」にお願いして特番をつくり、「出演しませんか」という形で声をかければハードルが下がるのではないかと考えたんです。

そうした縁も重なって、女性アイドルグループ「ReFLiA」の三好菜乃さんにご連絡したところ、企画の可能性を感じて参加を決めてくださいました。私が一から十まで説明しても伝わらないところを、ぎゅっと凝縮して理解してくださったんです。

初回実施時の応援プランは1,000円から最大約2万円までのコースで用意し、1,000円のプランでも生写真が手元に届くようにしました。第2弾の応援プランは1,000円から最大33,000円のコースを用意し実施。推しのみなさんの宿泊に関しては天成園 小田原駅別館さん、湯河原のホテルあかねさんなどにご協賛いただいたほか、多くの地域の皆さんにさまざまな形でご協力いただきました。旅の報告会では、お土産の話をしたり、ホテルあかねさんからお借りした浴衣を着用しチェキ撮影も行いました。

写真:推しVacationの第1弾・第2弾の旅に参加した三好菜乃さん(出典:推しVacation公式サイト)
写真:推しVacationの第1弾・第2弾の旅に参加した三好菜乃さん(出典:推しVacation公式サイト)

投げ銭ではなく、「旅」と「返礼品」にこだわるのはなぜですか?

板垣さん:ファンの応援が、推しにとっては旅の体験になり、ファンにとっても写真やお土産を通じ、推しとの思い出として人の心に最後まで残る。そんな応援の形をつくりたいと考えたからです。

たとえば、推しから届いたお皿を長く使いながら、旅の話を思い出したり、「あの子を推していてよかった」と感じたりする。応援プランが地域振興にもつながれば、「あのとき自分が関わったことで、あの地域が盛り上がったな」という、一歩深い思い出にもなるはずです。人生のなかの一コマに、そういうものをつくりたいと思っています。

クラウドファンディングに近い仕組みですが、あえて目標金額は設定していません。また、旅にはカメラマンなどのスタッフは基本的に同行せず、写真も推し自身が撮る自撮りです。旅はプライベートなものなので、写真の完成度よりも、そのプライベート感にこそ価値があると考えています。

写真:第2弾の旅で提灯づくりを体験した「小田原宿なりわい交流館」を再訪した三好菜乃さん(出典:推しVacation公式サイト)
写真:第2弾の旅で提灯づくりを体験した「小田原宿なりわい交流館」を再訪した三好菜乃さん(出典:推しVacation公式サイト)

Hameeとの出会いについて教えてください

板垣さん:まさに「ARUYO ODAWARA」がきっかけです。ARUYO ODAWARAが入るビルにはHameeさんの本社もありますし、ECを事業の柱にしているHameeさんと推しバケは親和性が高いため、同じ拠点にいるご縁を生かして「地元貢献」の文脈で、いつかお近づきになりたい!と考えていました。

2026年2月のチャレンジャーの成果発表会では、私は大幅に時間をオーバーしてしまいました。それでも発表の後に、Hameeの樋口会長が「面白いことをやっているね」と声をかけてくださって。その後の懇親会で話の続きをする機会があり、「ご協力いただけませんか」とお願いしたことが、今につながっています。

中島さん:5月ごろからご一緒しています。その前の4月下旬に、新規事業/開発部のミーティングへ板垣さんをお招きし、直接プレゼンを行っていただきました。その提案を受けたことが契機となり、私が本プロジェクトの担当をしています。

写真:ARUYO ODAWARA内観
写真:ARUYO ODAWARA内観

共同運営では、どのように役割を分担しているのですか?

板垣さん:スタンスとしてはもう一心同体です。私が動けないときに動いてくださることもあり、本当に共同でひとつの目標に向かっている感覚ですね。Hameeさんはフラットに、対等な立場で接してくださるので、とてもやりやすいです。Hameeさんがご一緒してくださるようになってから、推しバケがドライブし始めたと感じていて、本当に感謝しています。

中島さん:お互いに何をやっているかは常に把握しながら進めています。私自身もともとベンチャーにいた経歴があるので、何も決まっていない状態から事業を立ち上げていく大変さと面白さは分かっているつもりです。お互いに補完し合って進めるために何ができるかを考えながら動いています。

Hameeとしては、ECが得意なので、サイトを作ったり、必要になったときに仕組みを提供したりといった技術的な面での役割もあります。ただ実質的には、小田原の会社として一緒にやっていくという看板を提供して、ともに信頼を獲得していくことを、板垣さんも期待されているのかなと思います。

写真:Hamee株式会社 新規事業/開発部 中島さん
写真:Hamee株式会社 新規事業/開発部 中島さん

Hameeにとって、推しVacationにはどのような可能性がありますか?

中島さん:最初に上司から「推し活のサービスを一緒にやろうと思っている」と聞いたときは、正直なところ不安もありました。会社としては主にモノを扱ってきたので、推し活という新しい領域でサービスをきちんと立ち上げられるのか、と。

でもプレゼンを聞いて、板垣さんが何もないところからアイデアを形にし、2回の実証までやり遂げている、その実行力が一番の強みだと感じました。そこにHameeの信用力を掛け合わせれば、きっとできることがあると思ったのが最初の印象です。

Hameeは「ZカルチャーSPA」というキーワードを掲げていて、モバイルアクセサリーの「iFace」、韓国コスメやサプリメントを扱うビューティー事業、ゲーミングブランドの「Pixio」など、Z世代のお客様に向けた商品やサービスを多く展開しています。推し活は、まさにそのターゲットと重なる領域です。

写真:Hamee 中島さん(左)、見えまストレス 板垣さん(右)
写真:Hamee 中島さん(左)、見えまストレス 板垣さん(右)

地域の企業や施設との連携は、どのように広がっていますか?

板垣さん:伊豆箱根鉄道 大雄山線とのコラボレーションが進んでいます。アイドルの撮影会は、写真を撮って終わりになってしまうことが多いですよね。それはもったいないという話から、その写真を使って車内広告を出してはどうかというアイデアが、伊豆箱根鉄道さんの側から出てきたんです。大雄山最乗寺さんをつないでくださったのも伊豆箱根鉄道さんでした。まさかお寺で撮影会ができるとは思っていなかったので、驚きました。

こうして、霊場・大雄山最乗寺で推しとファンが撮影会を行い、その写真が大雄山線の車内広告になる企画が生まれました。ほかにも、小田原市観光協会が主催する「お城でマインドフルネス瞑想」体験を組み込んだ、小田原城天守閣での特別オフ会の企画も始動しています。

アイドルの企画は、通常はアイドルとファンの間で完結します。そこに鉄道会社のような公共性やブランド力のある第三者が加わることで、「推しバケに参加するとこういうことにつながる」ということを見える化できる。関わってくださる皆さんが、地域を含めて盛り上げていこうと協力してくださっているのが、本当にありがたいですね。

写真:伊豆箱根鉄道と推しバケのコラボの様子
写真:伊豆箱根鉄道と推しバケのコラボの様子

NEXCO中日本との取り組みについて教えてください

板垣さん:NEXCO中日本が設立したイノベーション交流会の「2025年度高速道路DXアクセラレーションプログラム」で、高速道路情報アプリ「みちラジ」の利用促進施策で、推し活を掛け合わせた企画でアイデア部門の最優秀賞をいただきました。見えまストレスとしては、2022年の「高速道路DXアイデアコンテスト」に続く受賞です。前回は実証実験にはつながりませんでしたが、今回は実証実験につなげようと、NEXCO中日本の皆さんも一生懸命協力してくださっています。

発想のもとになったのは、アイドル文化の「誕生日広告」です。ファンが有志でお金を集めて駅に広告を出す文化がありますが、掲出して終わりになりがちです。それを企業の広告に当てはめれば、ファンの応援で推しが企業のCMに出演でき、企業は自社のPRができる。ファンには返礼品が届いて思い出にもなる。みんながうれしい状態をつくれると考えました。

第1回は企画のイメージを伝えるためのサンプルとして、三好さんに音声CMを収録していただき、NEXCO中日本管内のインターチェンジ周辺にあるガソリンスタンドなどで放送されていました。これから売り出していきたいタレントさんにとって、NEXCO中日本のCMに出演できることは大きな実績になるはずです。2026年9月からは、第2回の出演者募集も始めました。

写真:「みちラジ」広告企画の第1回に出演した三好菜乃さん(出典:推しVacation公式サイト)
写真:「みちラジ」広告企画の第1回に出演した三好菜乃さん(出典:推しVacation公式サイト)

今後の展開と、事業としての課題を教えてください

板垣さん:継続的にタレントさんをブッキングできる状態をつくっていきたいと思っています。そのためには、次に参加してくださる方にとってのバリューを高めていく必要があります。どれだけいい方をブッキングできるかもそうですし、参加していただく舞台を私たちがしっかり用意できるかどうか。舞台については、協力してくださる皆さんのおかげで整ってきたので、あとはそれを私がきちんと言葉にして、タレントさんやファンの方に伝えていけるかだと思っています。

描いているのは、ファンと推しが一緒になって地域を応援する姿です。たとえば災害が起きた地域を、ファンと推しが応援プランで支え、聖地巡礼が生まれて、地域がもう一度活気づく。旅先の干物屋さんとつながって、推しと同じ朝ごはんを届けるサブスクリプションが生まれるかもしれない。私は思いが先走ってしまうタイプなので、Hameeさんに足元を固めていただきながら、ECに加えて協賛や広告も組み合わせ、新しい経済圏をつくっていきたいですね。

中島さん:まずは推しバケの企画をたくさん回して、実績を積み重ねていく段階だと考えています。「これくらいの企画で、これくらいの売上が上がる」という手応えを、一つずつ形にしていきたいですね。ECやデータを扱えることもHameeの強みなので、続けていくなかで推しとファンのコミュニティが大きくなれば、Hameeとしてご提案できることも増えていくと思います。

写真:Hamee 中島さん(左)、見えまストレス 板垣さん(右)
写真:Hamee 中島さん(左)、見えまストレス 板垣さん(右)

神奈川県の支援プログラムを活用して、感じたことを教えてください

板垣さん:KSAPのときは、大きな会社にヒアリングに伺う機会が多くありました。そこで「神奈川県のベンチャー育成プログラムに採択されています」とお伝えできると、話をきちんと聞いていただける。たとえば観光協会や地方自治体、地元企業に伺いお話ができたのも、県という後ろ盾があったからだと思います。

ARUYO ODAWARAは、まさにHameeさんとの出会いのきっかけになりました。私はひとりで会社をやっているので、普通なら鉄道会社やNEXCO中日本のような大きな企業にアプローチしても、なかなか相手にしてもらえません。Hameeさんがいて、いくつかの賞もいただいたことで、それができる状態になりました。そうした舞台をいくつもつくって、参加してくださる人を増やしていければと思っています。

写真:「推しVacation」も採択された「ARUYO ODAWARA」チャレンジャー(令和7年度)発表会の様子
写真:「推しVacation」も採択された「ARUYO ODAWARA」チャレンジャー(令和7年度)発表会の様子

最後に、これから起業する方や、推しVacationとの連携を検討している方へのメッセージをお願いします!

板垣さん:私はKSAPやARUYO ODAWARAでのHATSU起業家支援プログラムに採択されたことをきっかけに、後押ししていただきながら事業を伸ばしてきました。こうした機会は非常に価値があると思いますので、ぜひKANAGAWA STARTUPSのサイトなどで情報を随時チェックしてみてください。私は年齢もかなり上のほうですが、若い人たちにはもちろん、同世代やもっと上の世代の方にもどんどんチャレンジしてほしいですね。そうした挑戦が生まれるきっかけになって、神奈川県が盛り上がっていけたらと思っています。私も頑張ります。

推しバケとしては、鉄道会社や沿線の自治体、地域の事業者の方、そして協賛という形で私たちの活動に関わってくださる企業の方に、ぜひ見ていただきたいです。

中島さん:推し活と地域を掛け合わせるのは、まだ新しい分野です。推し活にはいろいろな側面がありますが、そのパワーを地域にうまく結びつけられれば、地域活性化にもつながっていくと思います。推しバケに参加したファンの方や、聖地巡礼で訪れた地域にとって、何がどれくらい良くなっているのか。「推し活を科学する」ように見える化していければ、推し活への印象もより良くなり、推しバケもさらに広がっていくと考えています。

写真:推しVacationのロゴボードを手にする中島さん(左)と板垣さん(右)
写真:推しVacationのロゴボードを手にする中島さん(左)と板垣さん(右)
民間と市町村が運営するコワーキングスペースと連携した「HATSU」関連支援拠点
ARUYO ODAWARA
HATSU起業家支援プログラム
県西地域で起業を目指す、かながわ”発”の起業家支援拠点「ARUYO ODAWARA」

神奈川地域発の起業家を次々と生み出す「HATSU起業家支援プログラム」により、有望な起業準備者(チャレンジャー)に対して事業化の実現に向けた伴走型集中支援を行うことにより、起業家の創出を促進しています。小田原市内の起業家創出拠点「ARUYO ODAWARA」で起業を目指すチャレンジャーを支援しています。

神奈川県発「社会課題解決型スタートアップ」の成長を支援するプログラム
かながわ・スタートアップ・アクセラレーション・プログラム(KSAP)
かながわ・スタートアップ/アクセラレーション・プログラム(KSAP)」

「かながわ・スタートアップ/アクセラレーション・プログラム(KSAP)」は、社会課題の解決に取り組むスタートアップを伴走支援するプログラムです。
年間を通じて、起業初期を対象としたプログラム「KSAPシード編」と、さらなる事業成長を目指す企業を対象としたプログラム「KSAPアーリー編」の2つを実施します。

企業情報

株式会社見えまストレス

株式会社見えまストレス

【事業内容】
推しVacation(推しバケ)の企画・運営(Hamee株式会社と共同運営)、Webサイト企画制作開発、ストレス可視化による労働者のメンタルヘルス対策

【企業サイト】
株式会社見えまストレス
https://www.miema-stress.com/

Hamee株式会社
https://hamee.co.jp/

【サービスサイト】
https://oshi-vacation.jp/

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